令和4年12月に実施された文部科学省の「通常学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」における調査結果では、「学習面で著しい困難を示す」児童生徒の割合は6.5%と推定されています。この結果から、1教室に30人の児童がいた場合、2人くらいいるということが示されました。
この記事では、近年増えてきている学習障がい(LD)について、どういった症状があるのか。
どのような対応を取れば良いのかを書いています。
学習障がい(LD)とは
学習障がい(LD)の特徴
LDは、読むこと、書くこと、計算すること、推論することなどの特定の分野に苦手さを示す、発達障がいのひとつです。
全般的に能力の落ち込みの認められる知的障がいとは異なり、おおよその能力は平均並みであるにもかかわらず、特定の分野のみに著しい苦手さを示す点(計算は得意で暗算はスラスラ、だけどひらがなやカタカナが覚えられないなど)が、LDの特徴です。
そのため、近年では、苦手さの部分が「限局的(限定的)」であることから、限局性学習症(SLD)とも表記されるようになりました。
LDのタイプはさまざまです。読むことだけが苦手、書くことだけが苦手、読むことの苦手さに起因して算数の文章問題が苦手など、特徴が多岐に渡ります。
そのため、支援方針もひとりひとりの特徴にあわせた対応が求められます。
また、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などを伴う場合も多く、個別の配慮や学習支援も必要であり、家庭と学校、あるいは専門機関との密な連携が必要になります。
LDは、文字や計算に触れる機会の増える小学校入学後に症状が確認される場合が多くあります。
未就学の段階では、文字が書けなかったり読めなかったりしても、「ちょっと勉強が苦手・発達がもしかしたらゆっくりなのかな」と認識しがちです。
しかし、小学校入学後も、字が書けない、読めないなどの問題に直面することが増えると、お子さん自身も、「自分だけできない」「みんなはできているのに…」と、戸惑いや不安を感じ、自信がなくなっていくなんてことも少なくありません。
LDの場合は、どうしても成績が芳しくない傾向にあるため、「頑張ってもどうせだめだ。努力しても意味がない」と、抑うつや怒りの感情が出てきたり、別の意味で目立とうと非行を繰り返すといったことも起こります。
自分自身で他の得意な能力に気づいたり、趣味や友だち関係など楽しめるものを見つけたりすることができないと、不登校やひきこもりに繋がる可能性もあるので注意が必要です。
学習障がい(LD)の症状
①「読む」ことが不得意
- 困難な状況としては、読み飛ばしや読み替えによる間違いが多い…(行を飛ばして読むなど)
- 文字は読めても単語や文として読むことが難しい…(「こ・ど・も」のように一文字ずつでないと読めない)
- 内容を理解することが難しい
②「書く」ことが不得意
- 単語を正確に書くことが難しい…(ひらがなの形がぎこちない)
- 板書を書き写すのに時間がかかる…(一文字ずつしか書けない)
- 助詞の誤用が多い…(「明日に晴れる」など)
- 作文を書くことが難しい…(文章形成が苦手)
③「聞く」ことが不得意
- 全体の指示や説明を聞くことが難しい…(行動に移すのが遅い)
- 正確な音として聞き取ることが難しい…(聞き間違いなどがある)
- 聞いた内容を記憶に覚えておくことが難しい…(ワーキングメモリの弱さも見える)
- 意味理解ができていない
④「話す」ことが不得意
- 考えを言葉にすることが難しい…(こそあど言葉が多い)
- 徐々に内容がそれてしまう…(話の内容がずれていく)
⑤「計算」が不得意
- 数字を読んだり、書いたりすることが難しい…
- 暗算ができない…
- ひっ算ができない…
⑥「推論」が不得意
- 表やグラフから読み取ることが難しい…
- 文章題が難しい…
- 図形の理解や書くことが難しい…
学習障がい(LD)の分類
LDの特性は、大きく「ディスレクシア(読字障害)」、「ディスグラフィア(書字表出障害)」、「ディスカリキュリア(算数障害)」として分類されます。
ディスレクシア(読字障害)の症状と生じやすい課題と支援方法
ディスレクシア(dislexia)は、読字障害や学習障害の一種であり、個々の文字や単語を正確に理解し、読み書きする能力に困難がある状態を指します。これは一般的に、言語処理や文字の認識に関連する特定の脳の機能に影響を与える神経発達の問題と考えられています。
ディスレクシアの特徴は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下のようなものが含まれます。
- 読み書きの遅れ: 読解や書写が同じ年齢の他の個人と比較して遅れが生じることがあります。
- 文字や単語の逆さ読み: 文字や単語を逆さまに読んでしまうことがある。
- 音の区別の難しさ: 音の区別や聞き取りにくさが見られることがあります。
- 読む際のスキップや挿入: 文章を読む際に一部をスキップしたり、余分な単語を挿入することがある。
ディスレクシアは生涯にわたり影響を与える可能性がありますが、適切な支援や指導を受けることで、個々の力を最大限に発揮することができる場合があります。個別のケースにより異なるため、早期に発見し、適切なサポートを提供することが大切となります。
ディスレクシア(読字障害)のお子さんに対する支援方法
読み飛ばしをしてしまうディスレクシア(読字障害)のお子さんには、指で読んでいるところをなぞったり、鉛筆や定規を当ててすでに読んだ行を隠したり、また厚紙などを切って1行だけ見えるようなシートを使ったりする効果的です。
また、プリントやタブレットの文字などには、分かりにくいフォントが使用されている場合があります。おすすめは人が読みやすいように作られたフォント「UD(ユニバーサルデザイン)フォント」を用いると見やすくなります。
ディスグラフィア(書字表出障害)の症状と生じやすい課題と支援方法
ディスグラフィア(dysgraphia)は、書字や表出(表現)の障害を指す学習障害の一種です。ディスグラフィアのある人は、文字を書く、文章を構成するなどの書記能力に関する困難を経験します。これは主に神経発達の問題に起因しており、手の運動能力や視覚的な処理などが影響を受けています。
ディスグラフィアの主な特徴には以下が含まれます:
- 字や単語の乱雑な表現: 書かれた文字や単語が乱雑で不明瞭な場合があります。
- スペルの困難: 正確なスペルが難しいことがあります。
- 文章の構造の理解が難しい: 文章を正しく構成することが難しく、論理的な順序やつながりが欠けることがあります。
- 筆記速度の低下: 一般の同年齢の人よりも遅い筆記速度が見られることがあります。
- 手の運動の協調の難しさ: 細かい手の運動協調が難しいことがあり、これが書字の困難につながります。
ディスグラフィアもディスレクシアと同様に、適切なサポートや指導を受けることで、書記能力の向上が期待されます。個々のケースによって異なるため、特定のニーズに合わせたアプローチが重要です。教育者や専門家の協力を得ながら、個別化されたサポートが提供されることが望ましいです。
ディスグラフィア(書字表出障害)のお子さんに対する支援方法
ディスグラフィア(書字表出障害)のお子さんには、大きめのマス目のノートや、マスのなかに十字の補助線のあるものを用いると効果的です。
小学校の2年生くらいになると、マス目の大きいものを使いたがらないお子さんもいらっしゃると思います。その際には、授業で使用するノートと家で宿題など練習する用のノートを使い分けましょう。
また、学校のプリントなども、マス目ではなく記入する列や枠だけある場合もあるので、鉛筆などで薄くマスを作ってあげると記入しやすくなります。
ひらがな、カタカナ、漢字の練習も、まずは発音してみて音として認識し、書くときも書き順なども意識させつつ、ゆっくり丁寧に書くことを心がけましょう。文字を見ながら意味を理解したり、その文字を用いる単語や文章も一緒に考えたりすることも良いでしょう。
ディスカリキュリア(算数障害)の症状と生じやすい課題と支援方法
「ディスカリキュリア」(dyscalculia)は、算数(数学)の学習において困難を経験する状態を指す言葉です。個々の数学的な概念や操作を理解することが難しいという特徴を持っています。これは神経発達の問題に起因しており、他の数学的な遅れとは異なるものです。
ディスカリキュリアの主な特徴には以下が含まれます。
- 基本的な算術の理解が難しい: 加算、減算、乗算、除算などの基本的な算術操作が理解しにくいことがあります。
- 数の大小や順序の把握が難しい: 数字の大小や順序を正確に理解するのが難しいことがあります。
- 数学的な記号や概念の理解が難しい: 数学的な記号や概念(例:代数、幾何学)を理解しにくいことがあります。
- 計算の遅れ: 数学的な計算が他の同年齢の人に比べて遅れが生じることがあります。
ディスカリキュリアはディスレクシアやディスグラフィアと同様に、適切な支援や指導によって改善できる可能性があります。専門的な教育プログラムや個別化された指導が必要とされ、早期の発見と適切なサポートが重要です。また、数学の学習において視覚や触覚など複数の感覚を組み合わせる教育手法も有効であることがあります。
ディスカリキュリア(算数障害)のお子さんに対する支援方法
ディスカリキュリア(算数障害)のお子さんに対しては、まずは日常生活における数字に着目し、理解するところから始めることをおすすめします。
身近なところでいくと時計を読むところからなど始めると良いでしょう。
一緒にお買い物に連れていって、「お菓子3個買っていいよ」や、「500円でお菓子買っていいよ」など、数字に触れ、数字を使う機会を増やしましょう。
お小遣い帳などをつけてみることも有効です。また、状態に応じて、計算機を使用することも学校の先生と相談してみましょう。
まとめ
学習障がい(LD)のお子さんの特徴と対応について紹介しました。
支援方法については、一例となり正解ではありません。お子さんの個々の特徴により合う合わないがありますのでいろいろと試していきましょう。
また、書字や計算などは、大人になるとパソコンやスマホで済ませてしまう部分も多くなります。
成績には反映されにくい部分ですが、生きていくための力を養うという観点からは、機器の使用を検討することも有効です。
学校だけでなく専門機関との連携も重要になります。
放課後等デイサービスや児童発達支援の利用も視野に入れましょう!
下記記事にて放課後等デイサービスと児童発達支援について記事にしています。
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